アパート経営を始めるには、土地代・建築費・諸費用を含めた初期費用が数千万円規模必要になります。新築と中古では費用構造が異なり、自己資金は総額の2~3割程度が目安です。
本記事では、初期費用の内訳から費用を抑える工夫、経営リスクまで、アパート経営に必要な資金計画を詳しく解説します。
初期費用とは、アパートを建てる、もしくは購入して運営を始めるまでに必要となる資金の総称です。土地代金・建築費用・各種諸費用を合算した金額が初期費用にあたり、総額は数千万円規模に達するのが一般的となっています。
以下、具体的な初期費用の内訳を見ていきましょう。
アパートを新築する場合、土地代金は最大の費用負担となることが一般的。東京都心では坪単価が数百万円に及ぶこともあるため、土地代金の総額が数千万円から数億円規模になるケースも珍しくありません。
すでに相続地を所有している場合は不要ですが、新たに購入する場合には、初期投資額を大きく押し上げる要因となります。
アパート本体を建てるための工事費用です。木造は1㎡あたり40万~60万円程度が相場で、鉄骨造やRC造になるとさらに高額となります。建築規模や設備仕様、耐震性能、デザイン性などにより、さらに坪単価が上がることもあります。経営の収支計画に直結する重要な支出といえます。
建物本体以外に必要となるのが付帯工事費です。具体的には、外構整備や上下水道や電気の引き込み、地盤改良などに要する費用。敷地条件により数百万円単位で上下します。特に、地盤が弱い土地は改良費用が高額化しやすい傾向があります。
不動産会社を通じて土地や中古アパートを取得する際、不動産会社に支払う手数料です。
仲介手数料の上限は「売買価格の3%+6万円+消費税」。手数料率の上限は法律で定められていますが、実際の手数料額は売買価格に比例して高くなることは理解しておかなければいけません。
仲介手数料は現金で支払うことが多いため、融資とは別に手元資金の準備が必要になります。
所有権移転や抵当権設定など、不動産登記のための費用となります。司法書士への依頼料と登録免許税を含み、数十万円レベルとなるのが一般的です。
融資を利用する場合は必ず発生する費用となるため、初期費用計画の中で確実に計上しておきましょう。
建物を守るための火災保険や地震保険の費用です。建物規模や補償内容によって変動しますが、初年度で数十万円程度になると理解しておきましょう。
万一の災害に備えるうえで欠かせない費用であるとともに、金融機関から融資を受ける際には加入を融資条件とされるケースも多くあります。
金融機関から融資を受ける際の事務手数料や保証料です。保証料は借入額の数%に及ぶことが多く、借入額に応じて数十万~数百万円の負担となるでしょう。融資条件によって変動幅が大きく総返済額に影響する費用なので、契約前に複数行での比較検討が推奨されます。
不動産登記の際に課される国税です。所有権移転登記には固定資産税評価額の2%、抵当権設定登記には借入額の0.4%など、一定の税率が法律で定められています。
登記費用の一部としてまとめて支払うことが多く、数十万円単位になることもあります。
土地の売買では消費税非課税となるものの、建物の建築費や仲介手数料、管理費などには10%の消費税が課されます。高額な建築工事費に対して消費税が上乗せされるため、多くの場合、数百万円規模の支出となる点に注意が必要です。初期費用を見積もる際、必ず考慮すべき項目といえます。
不動産を取得した際に都道府県から課される地方税です。原則として固定資産税評価額の3~4%が課税され、取得金額によっては総額で数十万~数百万円規模となります。軽減措置が適用されるケースもあるため、不動産購入時には最新の制度を確認しましょう。
不動産売買契約書や建築請負契約書に必要な税金で、収入印紙を貼付して納付します。契約金額に応じて税額が変動し、総額は数万円から数十万円になることが一般的。複数の契約書を作成する場合は、契約書の数だけの印紙税が必要になります。
新築でアパートを建築する場合、最も一般的な構造は木造や軽量鉄骨となります。
生和コーポレーションの公開データによれば、木造の坪単価は75~95万円、軽量鉄骨の坪単価は90~120万円が目安とされています。また、大東建託が公開する情報によると、東京都における貸家・共同住宅の平均坪単価は約105万円と示されています。
具体的な目安としては、例えば延床150坪規模の木造アパートなら約1.1~1.4億円、同様の軽量鉄骨で1.4~1.8億円程度。加えて土地を購入する場合には、立地条件により数千万円規模が上乗せされることとなります。
中古アパートは、新築に比べて物件価格自体が安いため、初期費用を抑えたい方には適した選択肢です。
ただし、中古アパートの購入費用には築年数が大きく影響するため、一概に費用の概算を説明することはできません。ご自身の予算をベースに、それに適した中古アパートを検討する流れとなります。
また、初期費用には不動産仲介手数料や各種の税金も加算されるため、それらの各種費用も見込んでおかなければなりません。仮に5000万円の中古アパートを取得するならば、各種費用として500万円(物件価格の約1割)が加算されるイメージとなるでしょう。
なお、新築アパートに比べ、中古アパートは修繕や改修などのランニングコストが高くなる傾向がある点も考慮しておく必要があります。
アパート経営に必要な自己資金は、一般的に総初期費用の2〜3割程度とされています。
たとえば新築で1億円規模のアパートを建てるならば、自己資金は2,000万~3,000万円ほど、中古で5,000万円規模のアパートを購入するなら500万~1,000万円ほどが目安です。
自己資金が多いほど金融機関からの評価は高まり、金利や融資期間が有利になりやすい一方、フルローンでは条件が厳しくなる傾向にあります。
初期の自己資金とは別に、空室や修繕に備えた予備資金を確保しておくことも重要です。
新築に比べ、中古や築古アパートは購入価格が抑えられるため、初期費用を抑えたい方は注目しておくべき選択肢になるでしょう。既存物件を安く購入してリフォームを加えれば、限られた資金でも効率的なアパート経営が期待できます。
なお、築年数が古い物件は利回りが高い場合もある一方、新築に比べると修繕や設備更新のタイミングが早く訪れる可能性がある点には注意が必要。購入費用を下げつつ、改修コストとのバランスを見極める姿勢が大切です。
アパート経営の初期費用を抑える方法として、国や自治体の補助金・減税制度の活用があります。
たとえば、耐震改修や省エネリフォームに対する各種の補助金など。また、一定の基準を満たした新築や改修においては、固定資産税が数年間減額される制度も用意されています。
これら補助金や減税制度ををうまく取り入れれば、一定程度は自己資金や借入額の負担を減らせるため、資金繰りに多少の余裕を持たせることができるでしょう。
アパート経営に必要な初期費用を抑える方法として、小規模からスタートするという選択があります。
たとえば、一棟アパートを建築・購入するのではなく、区分所有マンションや小規模物件からスタートすれば、頭金や諸費用を大幅に抑えられます。小規模投資なら資金リスクを低減させられるうえ、賃貸経営の経験を積みながら徐々に規模を拡大させていくことも可能です。アパート経営の未経験者にとっては、現実的な選択肢でもあります。
アパート経営で最も大きいリスクの一つが空室です。入居者が確保できなければ当然ながら家賃収入が減少するため、ローンの返済や管理会社への支払いで確実な影響をこうむります。
特に東京都心では競合物件も多いことから、立地や間取り、設備などで差別化できなければ入居率が低下する恐れも。あらかじめ需要調査を綿密に行い、入居者ニーズに合った物件運営を行う姿勢が重要です。
建物や設備は時間とともに老朽化するため、長期運用を前提とした場合、いずれ大規模修繕や建て替えが必要になります。特に外壁塗装や屋根補修、給排水管の更新などは多額の費用を伴うため、長期的な資金計画の中にコストを組み込んでおかなければなりません。物件運営をスタートさせたら、定期的に修繕費を積み立てるなどし、将来的な大規模修繕等に備えておきましょう。
短期の収益性だけではなく、将来的なコストを見据えて準備することが長期的な安定経営の土台となります。
アパート経営を始めるには、土地代や建築費、購入費に加えて諸費用が必要となります。その総額は数千万円規模に達するのが一般的です。
自己資金の目安は総費用の2~3割程度。安定経営のためには、空室や修繕に備えた予備資金も確保しておくことが大切です。
新築は高額ながら、立地や物件仕様の自由度が高いことが魅力。中古は修繕リスク等はあるものの、初期費用を抑えやすい点が魅力です。どちらを選択するにしても、補助金や減税制度等も活用しながら、なるべくコストを抑えた運用計画を立てていきましょう。
投資目的で
アパート経営を
始めたい
引用元:シノケンプロデュース公式HP
https://www.shinoken.com/
所有する土地で
空室に困らない
アパートを建てたい
引用元:セレ コーポレーション公式HP
https://cel-corporation.co.jp/
※1 参照元:シノケンプロデュース公式HP(https://www.shinoken.jp/apart/)
※2 参照元:セレ コーポレーション公式HP(https://e-cel.jp/) 入居室数÷自社管理戸数
※3 参照元:青山物産公式HP(https://aoyama-chintaikanri.com/kanri/activity)
(2025年2月調査時点)